アスンシオンカワムラ新聞

パラグアイで整体治療に携わっています。日々思ったことを綴ります。

うまい話には裏がある

そもそもブログを始めた理由は、以前から何か文章を書いてみたいという思いがあったからだ。2020年、新型コロナの流行に伴い、仕事が休業状態となり、その結果自由時間が大幅に増えたので、これ幸いと始めた訳である。

「男もすなる日記といふものを、女もしてみむとてするなり」(土佐日記)の心境だったのかも。

先月ある読者からメールをいただいた。「八幡太郎氏のブログは、物事を独特の視点で捉えているところがよい。それは数十年にわたる海外生活を経て、酸いも甘いも噛み分けた一つの境地にたどり着いたからこそ、見えてくる視点だと推測する。最近更新が途絶えているが、読んで元気がもらえるので次号が待ち遠しい(原文まま)」とあった。

これほど褒められたのは、瀬棚中学作文コンクールに入賞した時、関口先生に「この調子で頑張ったら芥川賞もいける」と言われて以来の光栄なので、「ふんどしを引き締めます」と即返信。書きたいというテーマがなかったのもあるが、忙しさにかまけてコロッと忘れていたのだ。

目の錯覚ではありません

四、五日前に自閉スペクトラム障害(ASD)を持った患者が来た。若い女性で腰が痛いとのこと。
ふとネットフリックスで配信中の韓国ドラマ『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』が頭に浮かんだ。というのも主人公ウ・ヨンウはASDを持つ新米弁護士という設定だからだ。NHK 『ちむどんどん』より数十倍面白い。超おすすめである。

現時点でもASD発症の原因は分かっておらず、脳の構造や機能障害によるものと考えられている。
整体で対処できる症状ではないが、少しでも患者の緊張を解きほぐすことは出来ないかと、自分の研究テーマでもある頭蓋仙骨療法を試みた。

案の定頭蓋骨に触れるとカチカチに硬い。
頭蓋骨は固くて当たり前じゃないかと思われるだろうが、健常者の頭蓋骨は触ってもごく僅かな弾力を感じる。それに対して精神的疾患やASDを持った人の多くは、異様に固い頭をしているのだ。

その硬くなった部分を手技で緩め、脳脊髄液の循環を促進させることにより健康を回復させようという狙いだが、勿論一時間やそこらしたからといって、急に症状が好転することはまずない。
そのせいか大概この治療の後には、もどかしい疲労が残るのだが、その反面、人体はそう一筋縄にはいくものではないという、当然の理を目の当たりにして謙虚な気持ちになる。

ASDの特徴の一つとして、他人に身体を触られるのが苦手な人もいるが、治療後「先生の治療は安心して受けることができた」と患者に言われたのは、嬉しかった。腰の痛みもよくなったというので、取り敢えず一件落着。



そういえば昔ASDの子供たちを連れて、二泊三日のキャンプに行った。大学四回生の夏休みだった。
自閉症児をサポートするサークルに所属していた高田君から「急用ができたので、代わりに行ってくれ」と頼まれたのだ。
「○○女子大生と同じテントで二泊三日やで」と言われて「よし、行く」と承知した(笑)。

キャンプ場ではテントの設営をしたり、焚き火用の薪を拾ったり、子供たちと遊んだりで汗だくになった。京都のあちこちの学生からなるボランティアサークルで、男女合わせて15~6名のメンバーだったと記憶している。
本当は小生アウトドアが嫌いなので、シャワーもない山奥での三日間のキャンプを安易に引き受けてしまったのは、ちょっと失敗したかなと思った。

夕食後の自由時間に小川で水浴びすると生き返ったように気持ちよかったことや、日本中の銀行名を片っ端から淀みなく言う少年を見て驚いたことは、今でも記憶に残っている。

肝心の〈同じテント〉はどうだったかって? 江戸時代の五人組を彷彿させるガチガチな相互監視の元、夜は男女別々のテントで休んだ。まあ冷静に考えると、高田発言は眉唾物だろうと最初から気づくべきではあったが。


後日高田君にその旨抗議すると、「(ポリエステル製か布製か忘れたが、その生地が)同じテントと言ったけど、同じテントの中とは言うてへんで」と言われた。

はっはっは、それは詭弁だろう。一本取られました。