アスンシオンカワムラ新聞

パラグアイで整体治療に携わっています。日々思ったことを綴ります。

成功の秘訣

治療成功の秘訣は何かと言われて「答えは他人に対する愛だ。愛を外にあらわせなかったら、人助けはできない」と、オステオパシー医ロバート・フルフォードは著書『いのちの輝き』の中で述べている。この場合愛を慈悲の心と言葉を置き換えてもよい。

〈治療家が愛に基づく信頼の態度で患者に接すると、患者も治療家に信頼で応えるようになる。そして両者の信頼関係が築かれると、患者が古い相念パターンー自分は具合が悪いーを破って、新しいパターン―自分はこれで治りそうだーを作り上げ治療プロセスが始まる〉この信頼関係を築くためには、初診での態度や表情、会話や問診のすすめかたが、重要であると。けだし至言。

しかしよく考えてみると、大概の治療家は技術を向上させる勉強はしているだろうし、痛みを抱える患者に対しても慈悲の心は持っている。にもかかわらず流行っている治療院もあれば、その一方そうでない所もある。経営や集客という面から考えると、もう一捻り何かが必要なのかも知れない。


今から28年前アスンシオンで整体院を開業した当初、さっぱり患者が来ず、ただ待っているだけの日々だった。3ヶ月ほどそういう状態が続いたある日、新聞で整体マッサージの広告を見つけたので行ってみた。セントロから少しはずれた場所にあった。

ドアを開けると治療室は暗く薄汚い。治療ベッドに至っては、うっすら埃が積もっているではないか。お化け屋敷かい?
他の患者がいる様子もなかったが、予約した時間から30分以上待たされた。挙げ句の果て"大先生"はサザエさんのような頭にヘアカーラーをつけたまま、スリップ一丁でお出ましだ。年配の女性だった。思わず「普通のマッサージを受けに来たのだが」と言ったのも、もしや売春宿がマッサージの名を騙ってやっている類いではないかと、一瞬思ったからである。

サザエさん先生の治療を目をつぶりながら受けていたら、急にドッカーン!!! よっしゃこれは勝てると確信したのだ(笑)。


早速経営方針を立て直した。具体的には····サザエさんの反対をすればいいのである。
①治療室内を掃除し、常に清潔感溢れる環境を保つ。
②時間厳守を徹底する。
③新聞広告やチラシは一切しない。以上。

①は当然と思うが、小汚ない場所で治療を受けたいなどという人はよほどの少数派だろう。

②はほとんどの病院等では時間予約はあってなきようなものなので、患者はひたすら待つしかない(今でもそうだが)。しかしこの現状に不満を抱く人は多数いる。そこで予約した時間通りに治療を開始する。ただそれだけ。この当たり前のサービスが大いに喜ばれることとなる。

③は新聞広告に載せるのは、そもそも流行っていないから載せるのだろうというひねくれた見方を、一部の者には与える可能性がある。つまり「わざわざ来てやったぞ」と勘違いする患者が増える確率あり。そんな野郎を治療するのは真っ平ごめんだ。こちとらマザー・テレサじゃないんだよ。
以後口コミ一本でやっていこう。

一言でいうと①②③は、リスペクトを最優先させたということだ。全く迷わなかった。『患者と治療家双方のリスペクトなくして繁栄なし』この信念が今日に至るまでの幸運を引き寄せたと思っている。

Bella Vista (Itapúa) 22-oct-2023

今まで過去を余り振り返らず突っ走ってきた。先日61歳の誕生日に柔道仲間と大酒を飲んだ翌日、昔のことをあれこれ考えていたら、ひょいとあのサザエさんを思い出したのである。

当然ながら自分一人では、ここまで来れなかった。妻をはじめ家族親族や友人知人の協力、そして小生の治療を信頼していただいた約八千名に及ぶ患者の皆さん、改めてありがとう。
サザエさん先生も、そういう意味では反面教師だった。