アスンシオンカワムラ新聞

パラグアイで整体治療に携わっています。日々思ったことを綴ります。

風邪は自然の健康法

 WHO憲章によると「健康は肉体的、精神的及び社会的に完全に良好な状態云々」とあるが、その状態を手に入れるためには何をすればよいか。
 この種の情報は巷に溢れており正直食傷気味であるというのが本音だが、風変わりな説として「風邪をひいたら発想の転換でこれ幸いと思え。風邪が体の掃除をし安全弁の役割を果たし、それを全うすることにより弾力の有る身体即ち健康体を取り戻す」がある。

 先月数年ぶりかと思われる位のきつい風邪をひいたので、久しぶりに『風邪の効用』(野口晴哉)を読んだ。そして著者が主張する上記の「風邪は自然の健康法」説に再び共感を覚えたのだ。

 一部内容を要約すると、例え風邪で熱が出ても(生きるか死ぬかという高熱でない限り)、むやみに解熱剤で下げるのではなく、その人の持っている体力で対処するのが良い。何故ならば熱が出るというのは、体内で異物と戦っているからであり、無理にその過程を薬で止めると、生体本来の活力を弱くする云々。
 つまり風邪は治すべきものではなく、経過するものである。自然な経過を邪魔しなければ、風邪をひいた後は、あたかも蛇が脱皮するように新鮮な健康体になると説く。

 確かにその通りだ。そもそも人間は鼻水を垂らしていようが咳き込んでいようが、それは免疫系が働いているということなのだが、昨今の人々の振る舞いを見ると、長年にわたりウイルスと共存しつつ生きてきた現実を、我々現代人はコロッと忘れているかのようである。

 近年コロナの影響もあり正体の掴めぬ閉塞感を感じて、例えば公衆の面前で咳一つするのにも躊躇いや不安に苛まれている人は、是非この本を一読されることを勧める。大いに気が楽になると思う。


 余談ながら「整体」という言葉自体野口晴哉の発明とされ、その一番弟子によると彼の整体法の究極の目的は「与えられた生命を完全に生き切る"余生"によって苦しまずに死ぬこと」らしい。
 何となくストア派哲学っぽいというか宗教の辿り着く先を匂わせないでもない。

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Parque Ñu Guasu

 ふと瀬棚中学校の恩師関口先生も似たようなことをおっしゃっていたのを思い出した。小生小学四年から中学二年まで北海道瀬棚に住んでいたのだ。
 それは先生が苦学生だった頃に風邪をひき高熱が出たが、医者にかかるお金や薬代がなかったのでどうしたかという話である。  
 「水をしっかり飲み、服を着込んで、布団を何枚も重ねて寝る。これで汗を出し尽くす。こまめに汗を拭き取りシャツを着替えることが肝心で、これで一日か二日で治る」と。

 この体験談に共鳴し、それからというもの自分が風邪をひいてこれはヤバいなという状況になると、関口式を実践しているが、大概これでよくなる。
 読者諸賢も機会があれば試されたし(但し自己責任でお願いします)。

 関口先生は寡黙でボソボソと話され、どちらかと言えば田舎の漁師町にはそぐわない学識豊かな教育者であった。
 「河村お前は勉強すればもっと出来るのに」と放課後よく言われたものだ。多分他の出来の悪い生徒にも同じことを言っていたのだろうと思われるが。

 不肖ながら先生に教わった化学はすっかり忘れてしまったが、あの時の風邪対策講義は価千金であった。


 本当に良い先生だった。