アスンシオンカワムラ新聞

パラグアイで整体治療に携わっています。日々思ったことを綴ります。

身の振り方を考えた

「寛容さを忘れずに日々生きていこう」

六月に入って朝晩ストーブの欠かせない日が続いている。冬のパラグアイは雪が降ることはないが、早朝霜が降りることもあり普通に寒い。

大学卒業後東京で就職したが、水が合わなかったのか二年で穴を割った。学生時代柔道に打ち込んでいた縁で、海外協力隊に応募して、パラグアイへ派遣されたのが26歳。この国が気に入り、人生の伴侶にも恵まれ、32歳アスンシオンで整体院を開業した。
それ以来この地で整体師の道を30年近く続けている。強盗団に殺されかけたのは40歳の時だ。50代で人生初の股関節手術を受けた。子供二人も成人した今年は60歳になる。

いつの間にか高杉晋作の寿命の二倍以上生きていると思うと感無量である。

確かに私が子供時分の60歳と、今の60歳を比べると、今の60歳は見た目も行動力も若々しくなったが、健康寿命若しくはQOL(Quality of Life「生活の質」)が維持できるのは70歳までという説もある。3~40代の頃に比べると、体力・知力が衰えるのは事実だ。中には勿論日野原重明先生のような人もいるが、それは例外だと思う。

今後の身の振り方を考えたら、何となく文頭に掲げた言葉が浮かんだ。



人生の半分以上を南米パラグアイで暮らしているので、異文化が自我に及ぼした影響は多分にある。具体的に言うと柔軟思考がとても身についた。Aプランが駄目ならBプランでいくかというやつだ。

異文化空間において、頑固に自己流を貫こうとすれば、ことあるごとに他者と衝突ばかりして物事が進まない。疲れるのだ。
そこでどうしても柔軟思考=寛容さが必要になる。これは何も長いものには巻かれろという意味ではなく、新しいことに挑戦し、それがよければ自分も取り入れようとする心がけと考えればよい。


①ある時医者へ行った。パラグアイに住み始めた頃だ。診察の予約時間は3時なので、時間にあわせて待合室で待っていたが、一向に担当の医者が現れない。
受付係に問うも「そのうち来るから」と言われ、結局大先生がお出ましになったのが5時だったので、怒るよりも呆れて٠٠٠٠本格的に風邪をひいてしまった。

②その医者に来週も来いと言われたので、(ただし前回のことがあったので)余裕で一時間遅れて行ったら「予約した時間にお前(私)が来なかったから先生は帰った」と。そんな理不尽な! 
流石にこれには堪忍袋の緒がぶちキレた。「だからこの国はいつまでたっても後進国なのだ」と。

ぶちキレ現象は、脳にある「扁桃体」が興奮しやすい状態にあることが多い。即ちストレスがたまった状態である。そのストレスの最大の要因は、自分の場合言葉の不自由さからくると思ったので、翌日からスペイン語学習に俄然熱が入るようになった。

余談だが、効果的な語学上達法は、先ず文法や基礎の約束事をマスターした後、誰でもいいので自分から話しかけてみることだ(気難しそうな野郎はパスしよう)。というのは同じような内容の話でも、各々人により言い回しが違うので、注意していると自然と語彙を増やすことができる。

③さてその一週間後、懲りずに三回目の診察。先日の反省から長期戦に備えて本を持っていった。ところが意に反して大先生の診察は予約時間ピッタリだったので、まあ一件落着としましょうか(笑)。

有難いことに、件の医者のような時間の概念のない人間は、パラグアイにおいても少数派になりつつある。やはり経済が発展するにつれて、このタイプは自然淘汰されていく運命にあるのだ。

寛容さとはリスクを理性的に判断する能力と、事態が悪化したときの精神的な打たれ強さを示す。つまりこれまでよい判断を(人生の過程において)重ねてきたことの確固たる証拠である。

『モテるために必要なことはすべてダーウィンが教えてくれる』(ジェフリー・ミラー、タッカー・マックス著)より。
この本は読んで損はしない、特にあなたが20~30代の男性であれば。